リニューアル第2号となる5月14日配信の有料メルマガは、「捜査当局の“見立て”と新聞報道はどうシンクロしているのか」。前号に引き続き、オウム真理教松本サリン事件と警察庁長官狙撃事件の取材体験を例に、新聞報道の裏側について詳しく解説しています。新コンテンツ、英語キュレーションも大好評です。
以下は本文の抜粋から
冒頭に書いた「公安部は平田を長官狙撃のホシと見なしている」という話は、新聞やテレビはまだどこも報じていませんでした。しかしそれは各社が気づいていなかったということではありません。この話はおそらく96年当時のこの段階で、警視庁クラブに所属している新聞やテレビであれば、周知の情報でした。
ではなぜ報じなかったのか? なぜなら、そこまで断定するほどの材料がその時点では出ておらず、あくまでも公安部の「見立て」でしかなかったからです。新聞の捜査当局取材は、だいたい次のようなプロセスで進んでいきます。
(1)捜査当局の「見立て」が新聞社に伝わる。この段階で新聞は取材をスタートし、その日に向けて準備。
(2)その「見立て」を断定的に裏付けられる「証拠」が現れる。この段階が、最大のスクープ合戦。「証拠」をつかんだ新聞社が「捜査当局は○○と判断 ○○の証拠から」といった特ダネをぶちかます。
(3)「見立て」と「証拠」をもとに、捜査当局が強制捜査に(ちなみに強制捜査というのは、家宅捜索か逮捕のこと)。この段階で一斉報道に入り、それまで準備していた数々のネタを撃ちまくる。人権侵害や業務妨害も何のその、強制捜査から1週間ぐらいは「何を書いてもOK」の姿勢で、持ちネタを朝刊夕刊でつないでいく。たとえば事前にホシとみられる人物をインタビュー取材しておき、逮捕されてから「逮捕前にこう語った」と報じるのはこの段階。
私が捜査一課の刑事から「滋賀の信者が」というネタを引っ張ってきた時期は、まだこの(1)の時期でした。さらに加えて、この時期の取材は、あくまでも捜査当局の「見立て」が正しいという前提で、いずれ強制捜査が行われるだろうという予測のもとに行われる準備取材です。だからこの段階で「見立て」を否定する取材をしても何も意味がない、という警視庁キャップの意見は確かにその通りでした。
仮に段階が(1)から(2)へと進んで「警視庁公安部、平田信容疑者を長官狙撃事件に関与と断定 ○○の証拠浮かぶ」というようなスクープが出たとしましょう。そこから新聞テレビは当局の見立てに従ってヨーイドンで一斉に報道をスタートさせ始めるわけで、そんな段階になって「実は平田は犯人じゃなかった」というようなネタを知っていたとしても書きようがありません。捜査当局の見立て=筋書きにそって、どれだけ情報を積み上げられるかというのが特ダネ競争の本質であり、その筋書きに沿わない情報が上がってきても、記事にはしにくいということなのです。
私が以前から言っているメディア構造論に沿って言えば、
コンテンツ =長官狙撃事件
コンテキスト=平田信がホンボシであるという捜査当局の見立て
ということです。長官狙撃コンテンツは、平田信ホンボシコンテキストにくるまれていて、異なるコンテキストに沿った情報が出てきても、捜査当局のコンテキストに合わない限り決して報じられない。そういう構造になっているということなのです。
(以下はメルマガ本文で!)
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■今週のIT最先端動向
ジオフェンシングは小売業界への福音となるか?
〜〜企業と消費者、「エンゲージメント」と「比較」のはざまで
いまアメリカの小売業界では、ジオフェンシングが注目されているようです。従来のFoursquareのようなチェックインが、店舗に実際に入ってきたお客さんだけをターゲットにしていたのに対し、ジオフェンシングでは「店舗」というエリアよりももう少し広い「店舗周辺」「○○町の街区」というようなエリアを対象にしています。この若干広いエリアに入ってきたお客さんに対し、「このエリアにある○○の店舗ではいまこういう商品が注目ですよ」といったレコメンデーションのメッセージを送るのが、ジオフェンシングの最近のトレンドです。
しかしこれがほんとうに効果があるのかはまだはっきりしません。WSJの記事によると、たとえば女性向けのファッションチェーンMauricesは、店舗の近くに来るとプロモーションのメッセージを送るサービスを開始しています。今のところ効果は定かではないのですが、「やってみなければわからないと期待している」という状況のようです。記事では「小売店はジオフェンシングに猛烈に期待している」と解説されています。
そもそもレコメンデーションは、Amazonのように自分のいままさに現在の興味関心事に近い商品がおすすめされるから意味を持つのであって、単にエリアに紐付けされているだけでは、あまりにも「関連」が弱いといえます。だってアップルストアにiPhoneケースを買うために渋谷の公園通りを歩いているとき、「ABCマートでいまこんな靴が人気!」と自分が履かないようなビジネスシューズをお勧めされても、とうてい興味を持てるとは思えないでしょう?
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■今週のライフハック
〜〜Macで不具合が出てしまったときの解決方法
■(新コンテンツ)今週の英語キュレーション
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(たとえば以下のような内容です!)
なぜ出版業界は、電子書籍にDRM(著作権管理)を出版業界は求めるのだろうか?という根源的な問いを書いています。そもそもDRMはコストがかかるわけです。無料ではありません。だから本来は、DRMにかけるコストと、そこで回復される逸失利益のバランスで考えなければならない。リスクマネジメントでいう「リスクとベネフィットのバランス」と同じ考え方ですね。
たとえば紙幣について考えてみると、通し番号や透かしによって、偽造されるのを防いでいます。しかし紙の本には透かしも通し番号もありません。なぜでしょうか?
記事には、「紙の本は、貨幣のようなものということ」と書かれています。つまり、わざわざコピー防止するのにかかるコストが割に合わないからです。そこまでコピー防止してまでコストをかけても、本のコピーによって失われる逸失利益はそれほど大きくないということです。だったら同じような価格帯(どころか紙の本よりもたいていは安い)電子書籍に、なぜわざわざ高いコストをかけてDRMをかける必要があるのでしょうか?
紙幣には偽造防止がありますが、貨幣には偽造防止がありません。それと同じように、電子書籍も貨幣と同じ程度に扱えばいいのでは?
■Why We Should Stop Calling it DRM (and Maybe Abandon It Altogether)
http://bit.ly/JeivGt
■今週のキュレーション
今週ツイッターで紹介した記事の中から「これは読むべき!」を厳選して紹介しています。
今週のメルマガは全部で2万7000文字あります。
お申し込み方法は二つあります。PayPalでの決済をご希望の方は佐々木俊尚公式サイトへ。またまぐまぐでの購読をご希望の方は、こちらのページへ。
以下は本文の抜粋から
冒頭に書いた「公安部は平田を長官狙撃のホシと見なしている」という話は、新聞やテレビはまだどこも報じていませんでした。しかしそれは各社が気づいていなかったということではありません。この話はおそらく96年当時のこの段階で、警視庁クラブに所属している新聞やテレビであれば、周知の情報でした。
ではなぜ報じなかったのか? なぜなら、そこまで断定するほどの材料がその時点では出ておらず、あくまでも公安部の「見立て」でしかなかったからです。新聞の捜査当局取材は、だいたい次のようなプロセスで進んでいきます。
(1)捜査当局の「見立て」が新聞社に伝わる。この段階で新聞は取材をスタートし、その日に向けて準備。
(2)その「見立て」を断定的に裏付けられる「証拠」が現れる。この段階が、最大のスクープ合戦。「証拠」をつかんだ新聞社が「捜査当局は○○と判断 ○○の証拠から」といった特ダネをぶちかます。
(3)「見立て」と「証拠」をもとに、捜査当局が強制捜査に(ちなみに強制捜査というのは、家宅捜索か逮捕のこと)。この段階で一斉報道に入り、それまで準備していた数々のネタを撃ちまくる。人権侵害や業務妨害も何のその、強制捜査から1週間ぐらいは「何を書いてもOK」の姿勢で、持ちネタを朝刊夕刊でつないでいく。たとえば事前にホシとみられる人物をインタビュー取材しておき、逮捕されてから「逮捕前にこう語った」と報じるのはこの段階。
私が捜査一課の刑事から「滋賀の信者が」というネタを引っ張ってきた時期は、まだこの(1)の時期でした。さらに加えて、この時期の取材は、あくまでも捜査当局の「見立て」が正しいという前提で、いずれ強制捜査が行われるだろうという予測のもとに行われる準備取材です。だからこの段階で「見立て」を否定する取材をしても何も意味がない、という警視庁キャップの意見は確かにその通りでした。
仮に段階が(1)から(2)へと進んで「警視庁公安部、平田信容疑者を長官狙撃事件に関与と断定 ○○の証拠浮かぶ」というようなスクープが出たとしましょう。そこから新聞テレビは当局の見立てに従ってヨーイドンで一斉に報道をスタートさせ始めるわけで、そんな段階になって「実は平田は犯人じゃなかった」というようなネタを知っていたとしても書きようがありません。捜査当局の見立て=筋書きにそって、どれだけ情報を積み上げられるかというのが特ダネ競争の本質であり、その筋書きに沿わない情報が上がってきても、記事にはしにくいということなのです。
私が以前から言っているメディア構造論に沿って言えば、
コンテンツ =長官狙撃事件
コンテキスト=平田信がホンボシであるという捜査当局の見立て
ということです。長官狙撃コンテンツは、平田信ホンボシコンテキストにくるまれていて、異なるコンテキストに沿った情報が出てきても、捜査当局のコンテキストに合わない限り決して報じられない。そういう構造になっているということなのです。
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いまアメリカの小売業界では、ジオフェンシングが注目されているようです。従来のFoursquareのようなチェックインが、店舗に実際に入ってきたお客さんだけをターゲットにしていたのに対し、ジオフェンシングでは「店舗」というエリアよりももう少し広い「店舗周辺」「○○町の街区」というようなエリアを対象にしています。この若干広いエリアに入ってきたお客さんに対し、「このエリアにある○○の店舗ではいまこういう商品が注目ですよ」といったレコメンデーションのメッセージを送るのが、ジオフェンシングの最近のトレンドです。
しかしこれがほんとうに効果があるのかはまだはっきりしません。WSJの記事によると、たとえば女性向けのファッションチェーンMauricesは、店舗の近くに来るとプロモーションのメッセージを送るサービスを開始しています。今のところ効果は定かではないのですが、「やってみなければわからないと期待している」という状況のようです。記事では「小売店はジオフェンシングに猛烈に期待している」と解説されています。
そもそもレコメンデーションは、Amazonのように自分のいままさに現在の興味関心事に近い商品がおすすめされるから意味を持つのであって、単にエリアに紐付けされているだけでは、あまりにも「関連」が弱いといえます。だってアップルストアにiPhoneケースを買うために渋谷の公園通りを歩いているとき、「ABCマートでいまこんな靴が人気!」と自分が履かないようなビジネスシューズをお勧めされても、とうてい興味を持てるとは思えないでしょう?
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たとえば紙幣について考えてみると、通し番号や透かしによって、偽造されるのを防いでいます。しかし紙の本には透かしも通し番号もありません。なぜでしょうか?
記事には、「紙の本は、貨幣のようなものということ」と書かれています。つまり、わざわざコピー防止するのにかかるコストが割に合わないからです。そこまでコピー防止してまでコストをかけても、本のコピーによって失われる逸失利益はそれほど大きくないということです。だったら同じような価格帯(どころか紙の本よりもたいていは安い)電子書籍に、なぜわざわざ高いコストをかけてDRMをかける必要があるのでしょうか?
紙幣には偽造防止がありますが、貨幣には偽造防止がありません。それと同じように、電子書籍も貨幣と同じ程度に扱えばいいのでは?
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