【衣食住を豊かに】
プーペガール/アトリエ/アットコスメ/食べログ/サンプル百貨店/Alike/おとりよせネット/シュフー/クックパッド/スマイティ/リビングスタイル
【エンタテインメントを楽しむ】
ツタヤディスカス/フィルモ/本が好き/ニコニコ動画/Spider/キンドル/まぐまぐマーケット
【外に出かけよう】
一休/ポイ探/フォートラベル/iコンシェル
【誰かとつながりたい】
発言小町/エディタ/みんなの政治/ウェブポ/エキサイト婚活
【生活のお悩み相談】
Qlife/OKウェイブ/オールアバウトプロファイル/マニュアルネット
おそらく聞かれたことのないサービスも中にはあるのではないかと思います。日本でも気づかないうちにこれほどまでに多くのウェブのサービスが生まれ、進化してきていることには、私も驚かされました。これらのサービスを使いこなすことは、私たちの生活シーンを豊かにする大きな原動力になっていくのではないかと私は思っています。
※以下、本書の冒頭部分に書いたプロローグを紹介していきます。
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日本の映画市場は年によってかなりの増減はありますが、二〇〇〇年代に入ってからはだいたい二千億円前後で推移してきています。一九九九年以前は統計の取り方が今とは異なっていたので正確な比較は難しいのですが、映画離れが深刻だった二〇世紀の終わりごろとくらべれば、かなり復調してきているというのが多くの人の一致した見方です。
映画の全盛期は一九五〇年代の終わりごろで、毎年のべ十億人ぐらいの人が映画を見ていました。つまりは日本人全員が、年に十回ぐらいは映画を見ていたということです。
ところがこの映画黄金時代にテレビが普及し始め、映画はあっという間に映像エンタテインメントの王座から滑り落ちてしまいます。さらには市場規模の減少によってコンテンツ制作能力もどんどん落ちてしまい、九〇年代ぐらいになると邦画のヒット作はほとんどなくなってしまいました。それまでは全配給収入の五割か六割を邦画が占めていたのが、九〇年代には三割ぐらいに下落してしまいます。底を打ったのは二〇〇二年で、この年の興行収入のうち邦画の占める割合はわずか二七・一パーセントです。
この時期、映画館の数もどんどん減って、ついには一七三四館になってしまいました。九三年のことです。黄金時代の六〇年には七四五七館もあったことを考えれば、この衰退ぶりは尋常ではありません。
しかし九〇年代の終わりから、映画史上は少しずつ復活をしてきます。要素はふたつありました。
まず、シネコンの普及。映画館の数が最低になった九三年にワーナー・マイカルが国内初のシネコンを神奈川県海老名市に作り、この映画館スタイルがだんだん日本人にも受け入れられて広がっていき、二〇〇〇年代に入ってからは爆発的に普及するようになります。
そして二つ目が、邦画の復活。きっかけは、九八年の『踊る大捜査線 THE MOVIE』です。これはフジテレビで放送したドラマの映画化で、フジテレビが出資して製作されました。この映画は大成功をおさめ、九八年の国内興行成績トップを記録したほどでした。
以降、このようなテレビドラマの映画化がさかんに行われるようになります。メディアの中でも最も影響力の強いメディアで、大々的な広告宣伝キャンペーンを行って消費者にリーチするのですから、ヒットしないわけがありません。この状況はゼロ年代の映画シーンを大きく盛り上げ、シネコンの普及とも相まって日本の映画市場を復活させる大きな原動力となったのでした。
しかし一方で、こうした映画は一般向けに作られたマスコンテンツでしかありません。たとえば二〇〇九年の映画興行成績の邦画上位を見てみましょう。
1 ROOKIES?卒業?
2 劇場版 ポケットモンスター ダイヤモンド・パール アルセウス超克の時空へ
3 20世紀少年<最終章>ぼくらの旗
4 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破
5 アマルフィ 女神の報酬
6 名探偵コナン 漆黒の追跡者〈チェイサー〉
7 ごくせん THE MOVIE
8 余命一ヶ月の花嫁
9 ヤッターマン
10 クローズZERO鵺
「20世紀少年」「アマルフィ」「クローズZERO」を除く七作品が、テレビ番組を経由したコンテンツです。さらにいえば、アマルフィは映画オリジナルであるけれども、実はフジテレビ開局50周年記念作品。
もうおわかりでしょう。つまりはいまの邦画の興行成績上位のほとんどは、テレビ番組の人気に依っているというものであるということ。
テレビを視聴している層にとっては、こういう映画は楽しいコンテンツとなるでしょう。しかし一方で、文化の圏域はいまやどんどん細分化されてきています。地方ではまだまだテレビは娯楽の中心に位置していますが、都市部ではテレビをほとんど観ない二〇代、三〇代は珍しくありません。
そういう層にとっては、おそらくは上位ランキングに入っているような「テレビドラマ・アニメの映画化」みたいなコンテンツはあまり興味を惹かないでしょう。
一方で、こうした非テレビ的な圏域にいる人たちが楽しめそうな映画文化も、本当はもちろん存在しています。「単館系映画」と言われるような文化圏です。シネコンで大々的に興行されるほどのマスコンテンツではないけれども、数千人、数万人規模の観客を惹きつけることができれば、十分に興行が成り立つような映画。
では、こうした細分化された文化圏にいる人たちに、どうやってそうした単館系の映画の情報を送り届ければいいのでしょうか。
実のところ、そうした導線はまだきちんと確立していません。
私は四月に、映画関係のお仕事をされているある男性(Twitterのアカウントは@reepicheep75)と映画の情報アクセスについてTwitter上でやりとりをしたことがあります。この男性がツイートされた内容は非常に興味深いものだったので、少し紹介してみましょう。読みやすいように、ツイートの文章は少し変えてあります。
「いま映画の動員数はシネコンができてからも特に変化はないと言われている。その中身を見ると東宝とテレビ局が中心になっている映画に偏りがあるとも言われている。いっぽうで単館アート系、と言われるところに若い人はいない。それはある意味当然で、なぜかといえば映画の情報発信が基本マス向けだから」
「特に単館系の映画の宣伝のやり方に的を絞ると、そう。まず雑誌、新聞。テレビスポットうてるような宣伝費はナシ。ここにひっかかる客層は間違いなくいるから、間違いじゃない。特にシニアの女性層」
「ただ、その層にヒキがあるのは、去年なら"オルセー美術館"、"パリのオペラ座"、"有名ファッションデザイナー"などといった要素。こういう映画とは別の要素が付け加えられないと、配給が成り立たない状況になってる」
つまりは、記号消費がまだ有効なシニア層に対して、「憧れのパリ」「有名人」といった記号を付与することでしか宣伝が行われてこなかったということです。そういう記号を付与すれば、そういうシニア層はたしかに単館系映画を見に来てくれるのかもしれません。でも本当にその映画を好きになってくれる層に、そうした宣伝はリーチしているのでしょうか? かなり疑問と言わざるを得ません。逆に、変な一般受けのするタイトルをつけたり予告編を作ったりすることで、逆に本来ターゲットにすべき層を離反させてしまっている可能性の方が高いのではないでしょうか。
reepicheep75さんは続けます。
「たとえば『奇跡の海』やビョーク出演の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を撮ったラース・フォン・トリアー監督の新作はカンヌで話題になっても配給のメドが立たない。『かつてはカンヌのノミネート作品というだけでカンヌ前に配給は決まってたのに』と嘆くのは簡単。けれど!」
「若い人がこの手の映画から離れてるのは、いまだ雑誌、新聞メインの宣伝に重きをおいているからでは? では若い人が映画の情報をどこから得ているか、と考えたり聞いたりするとやはりネットのようだ。しかし自分もどんなサイトなのかあまりイメージできないでいる。goo映画とかYahoo!映画などのサイトだろうか?」
「でもこういうサイトは"話題のもの"を教えてくれる、という『マス向け』でしかないように思える。ユーザーレビューがあるが、あまり役に立ってない感じ。ソーシャルメディア的な盛り上がりができるサイトがあると状況は違ってくるのでは」
本書の中でも紹介していますが、映画のDVDについては「ツタヤ・ディスカス」のようなソーシャルメディアによって面白い映画の情報が流れる生態系が少しずつできあがってきています。しかし現在上映中の映画については、まだそうした情報アクセスを支援してくれるようなソーシャルメディアは、すくなくとも日本国内では決定版がないのが現状と言えるでしょう。
「ちょっとついでに言うと、テレビに洗脳されるような勢いの映画宣伝、たとえば公開直前に一日中出演者が出てるようなキャンペーンにも限界があるとと思う。具体的に言うと去年の『ルーキーズ』の興行収入85億円が最後のピークでは」
「この手のテレビ局映画に火をつけたのは『踊る大捜査線2』だった。でも結局これを越えるテレビ局映画は出なかった」
「ちなみに去年はそんな中、映画と別要素のまるきりなしで成功した作品もある。ただしかなり低予算のレベルで、配給して、その金額を回収できたというレベルでの成功だけど」
「その作品とは、『アンナと過ごした四日間』、『倫敦から来た男』。ただし、若年層の姿は映画館になかった。こういう状態に対して『若者がバカになった』的な反応が出てしまうのは非常に残念」
『倫敦から来た男』は私も観ましたが、圧倒的なモノクロームの映像美を硬質な演出とともに見せる非常に洗練された佳作でした。こうした映画はもっと観られるべきだと私も思いましたが、しかしそうならないのは若者がバカになったからではなく、先ほども書いたように、そうした映画の情報がきちんと流れる導線が作られていないからでしょう。
「若年層を単館アート系に引き戻す、今の時代に合ったやり方はあるはず」
「さらに言うと、映画マニア的に単館アート系の映画を観る人もちょっと閉鎖的過ぎるんですね。『いいものは自然広まる』という考えは止めて欲しい。ちゃんといいものは観てもらいたい人々への効果的な流通経路をつくらないといけない」
「『アンナと過ごした四日間』と『倫敦から来た男』が同じシアターイメージフォーラムだったことも、面白い。アニメが強いのはリピーターの存在だけど(普通の映画で、何度も同じものに足運ばせるのは超むずかしい)、映画館リピーター、という考えも無視できない」
シアターイメージフォーラムというのは青山にあるミニシアターで、非常に良質な映画を上映し続けていることで有名です。
「とは言え、ちゃんとした宣伝の方もいる。今年はじめの『ボーイズ・オン・ザ・ラン』の宣伝担当をした方と結構密に話す時間があったが、『イベント的盛上り』に重点を置くことによって、宣伝が難しそうなこの完全ド・男な映画を成功させた、という」
「ココで言う"成功"は大ヒットのことじゃ、ない。そもそも「大ヒット映画」というのがマス的な考え方だ、と思います。今は、きちんと回収して、次に制作あるいは配給まで、繋げていくことが大事な事。一度配給され、制作された映画は権利が発生して何度も上映され得る
『ボーイズ・オン・ザ・ラン』というのは『ビッグコミックスピリッツ』に連載されていたマンガの映画化で、妄想ばかり抱いている二十代後半のダメ青年が初めて恋をしたけれど・・というような物語です。マス向けではないけれども、同じような世代で同じような悩みを抱えている若者には訴求する映画だったのでしょう。
reepicheep75さんはこう指摘しています。
「yahoo映画にしろ、goo映画にしろ、マス向けな感じ。紙の情報誌『ぴあ』を片手に映画観まくってたころの、映画情報の広がり方のほうが多岐にわたっていた気がします。なので、ウェブ上にマス向けでないサイト作られていけば、そういう広がりが期待できるのでは」
彼が夢想するのは、おそらくはこのようなウェブのメディアです――映画好きと映画好きがつながり、そこに無数の映画のコミュニケーションが立ち上がってくる。北欧の映画が好きな人たちの圏域や、小津安二郎のような昔のホームドラマが好きな人たちの圏域、あるいは香港のノワール(暗黒社会もの)が好きな人たちの圏域。そうした数多くの圏域がそのメディアの中では形成されていき、そうした圏域に新作の情報を投げ込むことができれば、本当にその新作映画を好きになってくれるであろうターゲットの層にリーチできるようになる――。
単館系映画の世界においては、まだこのような情報の広がりを形成できるような良いサイトはほとんど存在していません。しかし今後、そうしたサイトは必ずや現れるでしょう。なぜなら、その他多くの分野においては、そうしたソーシャルメディアはいまや百花繚乱のように姿を現してきているからです。
レストランの情報を交換する「食べログ」。ネット通販でおとりよせできるおいしい食べ物の情報をやりとりできる「おとりよせネット」。好きな本の情報を共有できる「本が好き!」。旅行記をみんなで回覧できる「フォートラベル」。女性の日々のさまざまな悩みを慰めてくれる「発言小町」。
それらのサービスは、ただ単に情報が配信されているだけではありません。そのサービス上で人と人がつながり、そうした人と人の関係が軸となって情報が流れていくのです。そういうサービスをインターネットの世界では「ソーシャルメディア」と呼んでいます。ソーシャルというのは、「社交」というような意味。ソーシャルダンスのことを社交ダンスと訳すのと同じですね。
これまで「何を買うのか」というような商品情報は、テレビや新聞、ラジオ、雑誌などのマスメディアを経由して購入するのがごく普通でした。しかしこれからは、そうした消費のための情報はすべてソーシャル化していきます。われわれの生活文化がどんどん高度化し、その結果として文化圏域が細分化していく中では、そうした情報をマスメディア経由で一元的に受け取るようなやり方は、もう間尺にあわなくなってきています。
そうした高度化して細分化した圏域に対応するかたちで、インターネットの中には細分化された圏域をきちんと捕捉することのできるソーシャルメディアがたくさん立ち上がってきています。これからはソーシャルメディアがすべての消費市場をカバーし、呑み込み、ソーシャルメディアなしには成り立たないようになっていくでしょう。私たちの文化は、いまそういう転換点に位置しているのです。
本書ではそうした新たなメディアの数々を紹介しています。どのメディアも、いますぐに使いはじめられるものばかりです。おまけにそれらのほとんどは無料サービスですから、是非本書をお読みになったうえで試してみられることをお薦めします。