マトリクスで考えるソーシャル時代のセルフブランディング

連載
 2月21日配信の有料メールマガジン「ネット未来地図レポート」は、「ソーシャル時代のセルフブランディング術を実践しよう(後編)」。TwitterやFacebook、ブログなどさまざまなソーシャルメディアをどう駆使すればいいのかという、その構築戦略についてマトリクス的思考法で解説しています。

以下は本文の抜粋から

 まだ他にもさまざまなメディアがありますが、とりあえずこの主要な5メディアをモデルにして説明します。この5メディアを、先ほどの<ストック/フロー>、<コンテンツ/キャラクタ>というx軸、y軸でマトリクスに分類すると、以下のようになります。(図は略)

 ストックには「情報をきちんと深く読んでもらえる」というメリットがありますが、しかしフローの情報が素早く流れるTwitterなどのリアルタイムウェブの世界につねに参加していくことができません。一方でフローに頼りすぎても、自分自身の価値をきちんと捉えてもらうのが逆に難しくなってしまうこともある。だからフローとストックをうまくバランスを取ることが大切なのです。

 たとえば私個人に関して言えば、当初はウェブ(ブログ)と書籍という二つのストックコンテンツによって、自分自身のブランディングを進めました。これは前回お話しした通りです。しかしTwitterという極めて更新頻度の高いメディアが普及していく中で、このリアルタイム性、フローの情報の伝播力のすごさをうまく活用できないかと考えるようになります。

 そういう時に出会ったのが、キュレーションという概念でした。これからは一次情報の発信だけでなく、それらの膨大な情報をうまく選別して人々と共有できるスキルが重要になる。そういう概念について書かれた記事をいくつか英文で読んで、「これを自分自身のブランディングの一環として始めてみたらよいのかも」と考えるようになります。そうしてTwitterを使い、自分が日ごろから収集している記事の1部をコメントとともに紹介するキュレーション活動を行うようになりました。

 Twitterでは情報の密度は求められていません。そもそも140文字しかないという制限の下では、長文のブログに匹敵するような濃い情報を配信することは不可能です。仮にそのブログのURLをTweetしたとしても、膨大なフローの情報が流れ続けるTwitterの世界では、たった1本のブログの紹介Tweetなんてあっという間に埋もれてしまう。

 しかしキュレーションであれば、「ひとつのTweetの情報は小粒で、1Tweetあたりの密度は低い」「しかしそれらのTweetを多くシェアすることによって、最終的に全体の情報量は増える」という長文のブログとはまた別の情報密度を作り上げることができます。つまりキュレーションは、フローのメディアにきわめてマッチしたブランディング戦術であるということなのです。

大好評! 今週のキュレーション

 毎週佐々木俊尚がTwitte上でキュレート(情報を収集選別し、意味づけを与えて共有すること)したウェブの記事を一挙公開しています。今週は約95本!。Twitterは流れが速すぎて追いかけきれないという人は、週のはじめにこちらからまとめてどうぞ。

今週の注目記事は3本。これも抜粋です

 Grouponのフラッシュマーケがさまざまな問題を引き起こしているのは、単なる営業マンの質とかそういうことではなく、どうもビジネスモデルに内在する問題なのではないか?ということが語られるようになってきています。フラッシュマーケはバーゲンハンターをどうしても排除できず、これが良い客と店の間のエンゲージメントを阻害する要因になっているわけですが、実は昨年発表されたGroupon2.0はこの問題を回避していく良い方向になるはず。しかしフラッシュマーケが真似されやすいビジネスモデルでレッドオーシャン化していっている中では、2.0化が間に合わない可能性もあるかもしれません。
■米国ではグルーポンの何が問題になってるのか 
http://t.co/r9K5tyn

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ソーシャル時代のセルフブランディング術を実践しよう

連載
 2月7日配信の有料メールマガジン「ネット未来地図レポート」は、「ソーシャル時代のセルフブランディング術を実践しよう」と題して、不安定なこの世の中で自分自身のブランドをどう確立していくのかという実戦的な方法を私自身の実体験に基づいて解説しています。

以下は本文の抜粋から

さて、以下から次号にかけては私の個人的な体験談を踏まえて解説していきましょう。

 まず第1に押さえておくべきことは、「人に知ってもらえる自分のコンテキストはどのようなものか」ということをきちんと自己認識すること。私はそのコンテキストを、以下のように捉えています。

(1)自分の専門分野は何か。
(2)その専門分野でどのような知識や知見、技術を持っているのか。
(3)過去にどのような実績を上げてきたか。
(4)自分がこれからやろうと思っている仕事はどのようなものか。
(5)その他の属性(連絡先、経歴、所属など)

 私は2003年春、それまで3年半勤めていたアスキーを退社してフリージャーナリストになりました。この時、上記のようなコンテキストは明確に意識していたわけではありません。徐々に試行錯誤しながらこのような項目を徐々に自分の中で積み上げていったのです。

 私がフリーになった段階では、もちろん知名度はほとんどありませんでした。「ほとんど」と言うのは、アスキー時代の最後の1年間はウェブのニュース編集部に所属し、週に1本程度の署名記事を書いていたからです。運の良かったことにこれらの記事はコンピュータ業界の中ではそこそこ好評で、知り合いのパソコン雑誌の編集者などからは「フリーになるんならうちの雑誌でも書いてくださいよ」といくつか声をかけてもらっていました。

 とはいえ、それだけでは独立するのには十分ではありません。もっと知名度を上げていくのにはどうするのか。さらに言えば、私はもともと技術者ではなく専門知識もさほど強くないので、技術系の人が多いパソコン雑誌業界でライターとして生きていくのはかなりたいへんではないかという危惧もありました。

 そこで「自分自身をどう売り込んでいくのか」というブランド戦略をまず構築していく必要がある、と痛感したのです。そこでまず第1段階として、自分自身のライターとしての技能を以下のように分析しました。

大好評「今週のキュレーション」!

 毎週佐々木俊尚がTwitte上でキュレート(情報を収集選別し、意味づけを与えて共有すること)したウェブの記事を一挙公開しています。今週は約70本!。Twitterは流れが速すぎて追いかけきれないという人は、週のはじめにこちらからまとめてどうぞ。

今週の注目記事は全部で3本。以下は抜粋です

 実名ベースのFacebookは日本人にそぐわないという意見をよく見ます。また「Facebookが日本で流行しなかったのは、実名登録だからだ」という一見もっともらしい論も。しかしこうした意見は、結局は後付けでしかありません。ウェブのサービスが流行するためには、「使いやすい」「利便性が高い」といった必要条件はもちろん大切ですが、だからといって使いやすいサービスがすべて普及するわけではない。それらは十分条件ではないのです。では十分条件は何処にあるのか?と言われれば、それは単なる先行者メリットだったり、時の運だったりすることがほとんど。過去15年のウェブビジネスの有為転変を見ていて、私はそう感じています。
 だからFacebookがこれまで普及してこなかったのも、「実名登録だったから」というよりも「先にミクシィが普及したから」「ガラケーの市場が大きくてそちらはまた別のサービスが乱立していたから」「モバゲーもあったから」といった要因の方が大きかったのではないかと思います。したがって今後もFacebookが流行しないと言い切る理由もまったくありません。私は個人的には、Facebookのようなリアルの実利に紐づきやすいソーシャルメディアの普及によって、日本の文化風土が変わっていく可能性を期待しています。
■日本人は「透明なFacebook」に耐えられるのか? 
http://t.co/yMZji5R

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私はどのようにして英語のウェブ記事を探して読んでいるのか

連載
   1月24、31日配信の有料メールマガジン「ネット未来地図レポート」は、「私はどのようにして英語のウェブ記事を探して読んでいるのか」と題して、英語の記事をどう探しだし、どう読むのかという実践的なスキルを2回にわたって詳細に解説しています。

以下は本文の抜粋から

 再掲しておきますが、以下のような3つの視点をまず定めて、その枠組みの中で記事を読んでいくことが必要だと書きました。

(1)分野を定めること。
(2)フレームを設定すること。
(3)仮説を立ててみること。

 そうして見出しをチェックする際には、この視点に沿った単語がその見出しの中に含まれているかどうかを最重要に気に留めておくわけです。見出しの英文の意味が明確にわからなくても、単語に「ピン」と来たらとりあえず「あとで読む」に入れておくことを心がけましょう。たとえば先週紹介したニュースサイトのMashableで、以下のようなタイトルの記事がありました。

■“The New York Times” May Start Its Own Version of WikiLeaks
http://t.co/HW1kQ4o


 ニューヨークタイムズが自社オリジナル版のウィキリークスをスタートさせようとしている、という記事です。きちんと英文の意味をいちいちとらなくても、斜め読みしている見出しの中に「New York Times」と「Wikileaks」という二つの単語があれば、「アメリカを代表する新聞がウィキリークスについて何かを始めようとしている」という漠然としたイメージは流れ込んでくるはずです。

 これまで新聞社とウィキリークスは敵対しているイメージが一般的に合ったわけですから、もし先の視点で(2)のフレームとして「新聞社とウィキリークスの関係」を設定し、たとえば「新聞社はウィキリークスと協力関係を今後構築していくかもしれない」という仮説を立てていたのであれば、「この記事はひょっとしたら新聞社とウィキリークスとの新しい関係性の話かも?」とピンと来るはずです。

 このようにして「読んだ方がいいかも」と思った記事は遠慮せず、どんどんチェックしていきます。悩んだ時は、とにかくチェック。膨大なノイズの海であるインターネットでは、情報との出会いは一期一会です。「面白そう、でも読むのが面倒かな」と尻込みしてチェックしないままにしておくと、たぶんその記事とは二度と出会えません。よほど多くの人に興味を持たれてあちこちでブクマされる記事でもない限り、膨大な情報の海に押し流されていって過去の幻影の中へと消えて行くだけでしょう。

今週の注目記事は全部で3本。以下は抜粋です

 グーグルのエリック・シュミットCEOが退任し、後任に創業者のラリー・ページが就任することが決まりました。記事中に「壮年期のGoogleは、Apple、Facebookという二正面の敵と戦わなければならないし、その勝算は、Googleの圧倒的優位とはもはや言えない」 とあります。Googleは検索に加えて、GmailやGoogleMapなどの各種ウェブアプリ、そしてOSのAndroidなど多岐にわたって展開しているので、今も非常に強いパワーを持った企業に見えます。しかし実際にはほとんどの収益はいまだに検索連動型広告のAdWordsとマッチング広告のAdSenseから。いま情報流通基盤が検索から徐々にソーシャルメディアに移行していっている状況の中で、いずれはグーグルの収益が天井を打つのは間違いありません。その段階に達するまでに検索以外の収益モデルを構築できるのかどうか。しかも2000年代前半と異なり、アップルやフェイスブックやアマゾンは以前と比較にならないほどの強いパワーを持ち始めており、グーグルはさまざまな分野で劣勢に立たされています。かつてマイクロソフトが迎えたのと同じ落日が、ひょっとしたら数年後にはグーグルにもやってくるのかもしれません。
■本誌インタビュー: Eric Schmidt 
http://t.co/N9iuVYf

また1月17日号から、新たなコンテンツとして「今週のキュレーション」が登場!

 毎週佐々木俊尚がTwitte上でキュレート(情報を収集選別し、意味づけを与えて共有すること)したウェブの記事を一挙公開しています。毎週50〜70本。Twitterは流れが速すぎて追いかけきれないという人は、週のはじめにこちらからまとめてどうぞ。

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コンテキストが書籍コンテンツの外殻を破り侵入する

連載
  1月17日配信の有料メールマガジン「ネット未来地図レポート」は、「電子書籍のコンテンツとコンテキストが交わる世界(後編)」と題して、本というコンテンツが電子書籍時代にどのような本質的変化を引き起こすのかを、映画の「活動弁士」や口承文芸などを引きながら大胆に予測しています。

以下は本文の抜粋から

 電子書籍のフォーマット(ここで私が言うフォーマットとはEPUBのような規格の話ではありません。前号のフォーム/フォーマットのお話を参照していただければ)の将来という話となると、常にウェブによる「マイクロコンテンツ化」や「マルチメディア化」の議論が浮上してきます。

 しかしマイクロコンテンツ化しやすい雑誌記事や新聞記事、動画と異なり、映画や書籍などのコンテンツはきわめて外殻が強固です。つまりひとまとまりのコンテンツパッケージとしての強度が非常に硬く、簡単にはパッケージがほどけない構造になっている。よく電子書籍の進化として「章ごとにばら売りするマイクロコンテンツ化」とか「小説に音楽や映像を取り込んだエンハンスドブック(拡張書籍)」といった未来像が語られますが、これらは書籍のパッケージ特性を過小評価した安直な分析でしかないでしょう。そうした新たなコンテンツのあり方は部分的には登場してくるでしょうが、それが書籍全体の世界に大きな影響を与えるようにはならないだろう、というのが私の現時点での意見です。

 ここで1本、導線を引いてみましょう。再び映画の黎明期の話です。

 映画の初期の興味深い技法のひとつに、「活動弁士(活弁)」がありました。サイレント映画をスクリーンに投影しながら、その横でストーリーや登場人物の台詞などを講談調でしゃべるというものです。欧米ではサイレント映画は楽団の演奏とともに上映するのが一般的で弁士は流行せず、活動弁士というのは日本だけの特異な技法でした。なぜ活動弁士が日本で隆盛をきわめたのかは、「人形浄瑠璃の義太夫語りの伝統」などというような解釈もあるようですが、はっきりはしません。いずれにしてもサイレント映画当時、人気のある弁士は映画スターのような扱いを受け、「あの弁士でなければこの映画は観たくない」など観客の側が弁士の質によって観る映画を決めていたほどだとも言われています。

『映画の内容よりも、むしろ弁士の優劣によって興行成績に差が出る場合が少なくなかった。それゆえ弁士がサイレント映画に付け加える説明は、「外国にあっては、作者と監督の二重創作であるが我が国へ来ては、それに説明[弁士]が加わり、三重創作となる」と言われるほどであった」(『映画館と観客の文化史』加藤幹郎、中公新書)

 さらに弁士は、映画の制作そのものにも影響を与えていたようです。

『弁士はサイレント映画館内で主導権を握るだけでなく、国内の映画製作現場に対しても影響力を行使しえた(たとえば弁士が説明しやすいように舞台演劇をまるごとおさめるような映像言語[ロング・テイク/ロング・ショット]を主として利用するよう現場に要請するなど)』

 これをコンテンツとコンテキスト(文脈、そのコンテンツを消費するための説明などの導線)の枠組みの中で捉えれば、映画はコンテンツであり活動弁士はコンテキストであると言えるでしょう。そしてこの活動弁士の映画製作への影響を見れば、コンテキストがコンテンツに影響を与え、いわばコンテンツの外殻を破ってコンテンツの内部にまでコンテキストが侵入してきているといえる。

今週の注目記事は全部で3本。以下は抜粋です

■最近、「Internet of Things」という言葉をよく聞きます。「モノ同士がつながるインターネット」と訳せるでしょうか。家電や健康機器、クルマなどさまざまな機器同士がつながることによって、人間の生活を勝手にサポートしてくれるようなインテリジェント化が進んでいくというものです。この記事(英語)で紹介しているのはiPhoneにつなぐスマート血圧計で、記録をビジュアライズし、WHO標準との比較もできるようになっています。ちょっと荒いのですが、CESの会場でデモしてもらっている動画もあります。この「モノ同士のインターネット」はソーシャルの進化やテレビの進化と並んで、今後のITの大きなトピックになっていくのではないかと私は考えています。
http://t.co/VkROLrA

さらに今週から、新コンテンツ!

 今週から「今週のブックマーク」を改造し、「今週の注目記事」と「今週のキュレーション」に分けました。「注目記事」では以前と同じように短い開設とともに数本の記事を紹介。また「キュレーション」では、私がこの1週間にツイッター上で行ったキュレーションのコメントとURLをまとめてアップしています。私のツイッターをフォローするのが面倒だ、あるいは後でまとめて読みたいという方には本メルマガでのチェックがお薦め! すでにツイッターでもう読んでるよ、という方は飛ばしてくださいね。

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電子書籍のフォームとフォーマットとは

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  1月10日配信の有料メールマガジン「ネット未来地図レポート」は、「電子書籍のコンテンツとコンテキストが交わる世界(中編)」と題して、電子書籍の「フォーム」と「フォーマット」という2つの変化について、オライリーの記事を引きながら論考しています。

以下は本文の抜粋から

 ここでフォームとフォーマットという2つの概念を提示しておきます。これはオライリーメディアのVPであるアンドリュー・サヴィカスが使っている定義で、ティム・オライリーが以下の記事で説明しています(後段にはキュレーションの話も出てきて興味深いのですが、これについてはまた別の機会に)。

■What lies ahead: Publishing(英語)
http://radar.oreilly.com/2010/12/2011-publishing.html

 フォームは、同じ作品がさまざまな形態(Form)で読まれるということ。たとえばひとつの小説は、単行本や文庫本、電子書籍やオーディオブックなどのさまざまなフォームで読むことができます。

 一方で、フォーマットは書き手がどう本を書き、それを読者がどう読むかという部分のより深い変化のことを指しています。日本語で言えば「構造」というような感じでしょうか。オライリーはグラフィックノベルや日本のケータイ小説などをフォーマットの変化の例として挙げています。

 この定義に沿って言えば、いま起きている電子書籍の波は、フォームの変化の波と言っていいでしょう。オライリーの記事にもありますが、たとえば地図が紙の地図から動的で常に最新版に保たれ、リアルタイム性のあるGoogle mapへと変化してきたのは、フォームの変化です。

 電子書籍の進化は、このフォームの変化とフォーマットの変化の両輪によって続いていくのではないかと考えられます。まずフォームが多様化し、続いてフォーマットも多様化していく。(後略)

今週のブックマークは全部で4本。以下は抜粋です

 音楽がデジタル配信に変わることによって、ライブコンサートの重要性が以前よりも増してきているということは以前から指摘されています。そのライブコンサートという分野に、Ustreamやニコニコ生放送のようなネット中継というモジュールはどう関わっていくことになるのか。このあたりが音楽の将来可能性を測る上で非常に重要なテーマだと思うのですが、本記事では非常に興味深い論考が展開されています。ライブには「時間の共有」「場の共有」という2つの同期性があるわけですが、ネットライブは「時間の共有」のみを実現し、「場の共有」はライブコンサートに残される。ここが分離されることによって、ネットライブの新たな可能性がさらに見えてくるのではないかとも考えられます。
■ライヴストリーミングの広がりが持つインパクト 
http://t.co/3F7sxXx

 上記のエントリーと合わせ、以下のドワンゴ川上さんのブログエントリーも併読されることをお薦めします。
■東京ドームもびっくり!?ネットが拓くライブビジネス革命
http://d.hatena.ne.jp/kawango/20100921

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電子書籍のコンテンツとコンテキストが交わる世界

連載
 12月28日配信の有料メールマガジン「ネット未来地図レポート」は、「電子書籍のコンテンツとコンテキストが交わる世界(前編)」と題して、電子書籍についての新たな論考を展開しています。

 書籍のコンテンツとコンテキストは今後、オープン化されていくのか。もしそうなっていくとしたら、いったいその先にはどんな構造が立ち現れてくるのか。書籍「電子書籍の衝撃」を上梓したのは今年4月でしたが、その後に私自身で深めていった論考を今週号と年明け10日配信の次号で展開いたします。

以下は本文の抜粋から

 まず書籍を、コンテンツとコンテキストの総体であると捉えてみましょう。書籍のコンテキストは、オープンに誰にでも開かれています。仮に著者や出版社が「この本はBの視点で読んでほしい」というコンテキストを定義していたとしても、読者の側が「この本はBの視点で読むと面白い!」ととらえ、そのB視点というコンテキストがブログやTwitterなどで流通して支持されれば、多くの人はB視点でその本を読むようになる。著者や出版社の側が「B視点で読まれては困る。A視点で読んでほしい」と願っても、制限したり禁止することはいっさいできません。コンテキストは著者や出版社の所有物ではないからです。つまり完全オープンであるということです。

 一方、コンテンツは著作権法で厳密に守られていて、オープンではありません。コンテンツの内部(本文の章やパラグラフ、文章、見出し、写真、図版)に外部から直接アクセスすることはできないのです。これをウェブによる構造化という概念で考えると、次のようになる。

(1)書籍のコンテキストは、ウェブ化されている。
(2)書籍のコンテンツは、ウェブ化されていない。

 O'Reilly Rader(オライリー・レイダー)というサイトで、ヒュー・マクガイヤー(Hugh McGuire)という人が「本とインターネットの境界はなくなっていくだろう」という記事を書いています。

 彼は書籍を、「インターネットの内側にあるのか、それとも外側にあるのか」というポイントで考察しています。インターネットでは、コンテンツはウェブの流儀で構造化されています。ウェブの本質はリンクで、リンクに基づいて検索され、あるいは更新通知され、それが読み手の側に情報となって流れていきます。

 しかし現在の電子書籍は、デジタル配信されているという意味では印刷物流だった紙の本よりもずっとインターネットに近い場所にまでやってきていますが、このようなウェブの流儀には則っていません。マクガイヤーは書いています。

「電子書籍の特定のページやパラグラフ、章、画像、表などに対してディープリンクできない。
 電子書籍に対する標準的なリンクのシステムが存在しないので、電子書籍のタイトルそのものやその中の章に対するパーマリンクが存在しない。
 そしてみんなが望んでいる書籍本文のコピーアンドペイストもたいていの場合できない。
 たとえば『モントリオールについて1942年に書かれた本』というような横断的な検索ができない。同じ出版社の中でさえも」

 だからまだ電子書籍は「インターネットの外側」にいるということです。これをインターネットの内側に持ってくるためには、リンクとテキストを構造化してリーチ可能にしなければならなりません。

今週のブックマークは4本!

 Twitterのアカウントの信頼度や人気度を測る数値としてはフォロワー数が現時点では一般的ですが、指標としてはあまりにも大ざっぱすぎると言えるでしょう。しばらく前、朝日新聞に香山リカ氏と斎藤環氏がツイッターを批判するという記事が掲載されましたが、その中で香山氏が「ツイッターはフォロワー数がすべてで、これは市場原理主義の弊害だ」という香ばしいコメントを寄せていました。これはまあ論外としても、フォロワー数だけで価値がわかるわけではないというのは当然のことです。実際、「情報商材系」の人たちはフォロー/リムーブを頻繁に繰り返してはフォロワー数だけを機械的にどんどん増やしていくというようなことをやっていて、しかしそこには何の価値も生まれていません。
 90年代半ばの検索エンジンはサイトの評価基準が甘かったため、情報商材系のようなスパムにさんざん悪用され、どんなキーワードで検索しても「ポルノ」「カジノ」が表示されてしまう、というようなことが起きていました。そこに登場したのがグーグルで、「人気の高いサイトからリンクされているのは良いサイト」というページランクテクノロジを持ち込み、検索エンジンの性能を飛躍的に高めたのです。
 それと同じように、ついったーでも「人気の高い人からたくさんリツイートされている人は良いユーザー」というような信頼度指標を実現することは可能でしょう。おそらく近いうちにそのような解析技術が登場してくるのではないかと思います。
■フォロワー数より誰にリツイートしてもらうかが重要
http://www.ikedahayato.com/?p=2530

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フラッシュマーケティングはなぜブレイクしたのか?

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 12月20日配信の有料メールマガジン「ネット未来地図レポート」は、最近話題のフラッシュマーケティングについて「なぜ大ブームになったのか」を分析しています。

 最大手の米グルーポンがグーグルから買収を持ちかけられる(噂では交渉金額は30億ドル以上だったとか。ユーチューブ買収金額の倍!)など、成長著しい市場です。なぜこれほどまでに盛り上がっているのでしょうか?

■以下、本分から抜粋。

 歴史を振り返ってみると、もともとこのようなネットの共同購入サービスは、1990年代終わりごろにはすでに存在していました。すごい技術を使っているわけでもなく、それほど斬新なサービスではないということなのです。それがなぜ今になって、急成長を始めているのか。この背景事情に、実はソーシャルメディアの普及によるソーシャル圏域の拡大という重要なキーポイントが隠されています。

 90年代当時はフェイスブックのような巨大SNSや、ツイッターのようにリアルタイムに情報を交換できるソーシャルメディアは皆無でした。だから当時の共同購入は、ユーザー同士の情報交換を電子メールに頼っていました。しかし電子メールの場合、ユーザーひとりひとりが情報を流せる先は日ごろ仕事でつきあいのある人やリアルの友人など、かなり限定的。またひとりの友人に電子メールで共同購入情報を送っても、その情報はその友人に送られるだけで、他の人には広がっていきません。しょせんは電子メールというのは「1対1」の情報のやりとりしかできないシステムで、おまけにリアルタイム性も乏しいことから、共同購入の基盤としてはあまり適合していませんでした。結果として共同購入も、あまり流行らないまま廃れていってしまったのです。

 ところがツイッターというリアルタイム性がきわめて高く、しかも自分の発信した情報がフォロワーみんなで共有されるという「多対多」の情報共有サービスが出現してきて、一気に状況は変わりました。ツイッターを使えば、共同購入の情報をどんどん配信し、しかも「最低申込数まであと5人!」といったスリリングなリアルタイム情報を共有することができて、みんなでお祭り騒ぎ的に盛り上がることができるようになったからです。

 つまり90年代にすでに存在した共同購入という古いサービスが、2010年ごろになってフラッシュマーケティングという新しい名前を付けられて復活してきた背景には、ツイッターのようなリアルタイム性の高いソーシャルメディアが普及してきたことがあったということ。

 膨大なソーシャルグラフとリアルタイム性を擁したツイッター。自前ではソーシャルグラフを用意せず、ツイッターのエコシステムに参加する形で駆動するフラッシュマーケ。このように巨大プラットフォームにソーシャルグラフを依拠するビジネスは、いま凄い勢いで増えています。いや、言い換えればいまやソーシャル系の新規サービスは、巨大プラットフォームのソーシャルグラフに依拠しなければ離陸できないという構造ができていると言っていいかもしれない。つまりソーシャルメディアでは、次のようなヒエラルキーが生まれています。

■今週のブックマークは、以下の電子書籍の話題など3本。

 雑誌「美術手帖」などで知られている美術出版が、ドッグイヤー(犬の年、ではなく「犬の耳」です)という電子書籍サービスのβテストをスタートさせました。これは雑誌の各ページ上の任意の場所に対して、読者がツイッターのアカウントでツイートできるというものです。ページを開いて「つぶやきを表示する」ボタンをタッチすると、そのページのいろんな場所にいろんな人がツイートしているのが、吹き出しのように表示されるという仕組み。どんなことに他の読者が興味を持ち、どんな感想を抱いているのかが共有できるわけです。
 pdfにdogearのレイヤーをかぶせているだけなので、オープンにさまざまな電子書籍サービスに展開していける可能性も持っている。オープンかつソーシャル。この2つの要素を兼ね備えた電子書籍サービスというのは、いままで既存の出版業界にはなかった発想といえ、私は非常に期待しています。
 まだ発展途上で、たとえば雑誌のページに対してツイートした内容は、ツイッターの画面でフォロワーが見ると「ツイート」+「その雑誌の購入ページへのリンク」しか表示されません。つまりその雑誌を持っていないフォロワーにはいったい何をツイートしているのか意味がつたわらない可能性があるわけで、このあたりの動線をどううまく設計するかが今後の課題といえるでしょう。
■美術出版の「dogear」
http://t.co/mkuoREQ

■いかがでしょうか。今回は全文で約7500文字。
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フェイスブックとマーケティングの交差点

連載
 12月13日午後5時配信の有料メルマガ 「ネット未来地図レポート」は121号。いま日本でも急速に盛り上がってきているフェイスブックが今後日本でどのぐらい普及する可能性があるのか?を論考する3回シリーズの最終回。フェイスブックが企業や個人のブランディングやマーケティングの拠点(ベースキャンプ)となり得る可能性について、他のソーシャルメディアと比較しながら解説しています。

■本文より抜粋で紹介

 フェイスブックも、本メルマガの「前編」で説明した通り、もともとは大学の同級生同士の交話からスタートし、その後は有用な情報アクセスのプラットフォームへと進んできました。SNSというのは収益の設計が難しいビジネスで、単に交話が行われているだけではうまくマネタイズできません。どうしてもそこに広告効果や物販の喚起作用を求めようとすると、情報がうまく流れるプラットフォームにしていかざるをえません(あるいはそうでなければ、ソーシャルゲームのようにアイテム課金で儲けるしか・・)。その意味で、ミクシィにしろフェイスブックにしろ情報流通プラットフォームへと進化させている、進化させようとしているというのは、ビジネスの成長を考える上で当然の流れといえるでしょう。

 現在のところ、日本のソーシャルメディアの中で情報流通とつながりを両立させているメディアは、ツイッターしか存在していません。その意味でツイッターはきわめて強力ですし、140文字のコミュニケーションは日本の文化風土にも合っているかなと思われるのですが、しかし一方で情報流通プラットフォームとして考えるときわめて不完全です。

 ここで消費社会における情報流通プラットフォームの役割について考えてみましょう。基本的には企業と消費者の間で、どう情報を流し、どうコミュニケーションを取るのかということが、いまのソーシャル的情報流通プラットフォームには大きな課題となっています。

 とくに今のように情報発信チャネルが多様化していく中では、企業の側はありとあらゆるチャネルをポートフォリオ的に設計していかなければなりません。

企業

   動画・写真・つぶやき・もう少し長い文章
↓↑ アプリ・ゲーム・Q&A・掲示板・チャット
   SNS内コミュニティ・場所・いいね!ボタン

消費者

 情報発信チャネルはこのようにインターネット上だけでも無数に多様化してきています。企業は動画をユーチューブにアップし、写真をフリッカーで見せ、ツイッターでつぶやき、ブログに良い文章を書き、あるいはアプリで自分のブランドを表現し、時にはQ&Aサイトで質問に答え、掲示板やチャットで消費者とやりとりし、自社のリアルのお店でチェックインしてくれた消費者にご褒美をわたしたりしなければならない。しかもこの多様化は今もどんどん進行していて、予想もしていなかったような新たなチャネルが次々といろんなベンチャーによって発案されていっています。

 企業のマーケティング担当者は、これらのチャネルをきちんと押さえていかないといけません。しかもそれぞれのチャネルがどのようなユーザー層なのかを把握し、それらのユーザー層(アーリーアダプターなのか、マジョリティなのか)に合わせた情報発信をしていかなければならない。これはいまのようなソーシャルメディア時代についていけていない企業担当者には苦行以外の何ものでもないでしょう(笑)。また同様に、クライアント企業からのそうした要請に応えられないネットリテラシーの低い広告代理店も。

■今週のブックマークは、以下の無線LANを使った家庭内電力量管理システムの話など3本。


 IVSのローンチパッド(デモ合戦)で発表された新サービス。残念ながらローンチパッドでは入賞しませんでしたが、きわめて可能性の高いサービスだと私は考えています。家庭内版スマートグリッドと言えるでしょうか。単に消費電力を減らすだけでなく、いったいどの家電製品がどのぐらいの電力をどの時間帯に消費したのかを計測していくことで、その家庭の時間の使い方や生活ぶりなどがライフログ的に計測していくことができます。ただこのライフログを実現するためにはありとあらゆる機器の電源ケーブル部分にELPのプラグをかませないといけないので、普通の家庭でもぼうだいな数のプラグを導入する必要があるでしょうね。だから問題となるのはプラグの価格をどこまで下げられるのかという点になりそうです。
■電気の家計簿「ELP(Energy Literacy Platform)」
http://techwave.jp/archives/51530844.html

■いかがでしょうか。今回は全文でなんと約9500文字。
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フェースブックは日本でブレイクするか?(前編)

連載
  11月29日午後5時配信の有料メルマガ 「ネット未来地図レポート」は119号。いま日本でも急速に盛り上がってきているフェースブックが今後日本でどのぐらい普及する可能性があるのか?を論考します。前編ではまず「パブリック/プライベート」「ロケーション/リアルタイム/レコメンド/Q&Aなどのジャンル横断」という2つの座標軸から、フェースブックの戦略の全体像を解説。

■本文より抜粋で紹介

フェースブックは、当初の排他的プライベートメディアから脱して、2000年代後半からは徐々に「情報流通」を中心としたパブリックメディアを志向するようになっていきます。

 このあたりの問題意識については、ロングテールの法則や『FREE』で有名なワイヤード編集長のクリス・アンダーセンが2005年にブログで的確に指摘しています。これは私が2年前に刊行した『インフォコモンズ』でも紹介したコメントですが、再掲しましょう。

「レコメンデーション・ネットワークとしてソーシャル・ソフトウェアの問題はソーシャル・ソフトウェア自身に根ざしている。"友達"は特に趣向に関してはとっても無愛想な装置だ。悲しい事に、僕の友達のほとんどは音楽に関しては不快な趣向を持っている(だからと言ってそれを彼らに向けるわけではない)。一方、僕が頼っている音楽のレコメンデーションのほとんどは一度も会ったことのない人達だ、Rhapsody編集者かMP3ブログか。僕がアドバイスを必要としている実質的に他の狭いカテゴリー全てでは本当にものをわかっている専門家は僕の知らない人たちばかりだということだ」

 つまりプライベートな友情の圏域では、自分にとって必要な情報は流れてこない。プライベートではなく、その外側にも広がる多くの人たちが存在するパブリックな圏域をうまくコントロールすることによって、そこからセレンディピティあふれた良い情報がうまく流れ込んでくるようになるということなのです。

 言い方を換えれば、こういうことです。――人間は素晴らしいが、好みはまったく合わないヤツとつきあうか。それとも好みは合うが、性格の合わない嫌なヤツとつきあうか。前者はあたたかい人間関係を作り上げることはできるかもしれませんが、しかし情報共有圏は高度化されず、自分自身の情報アクセス能力を高めることはできません。そこでリスペクトを介して知らない人同士が共鳴するようなパブリック空間を作り、そこで有意義に情報を流せるようにならないだろうか? それがいまのフェースブックの狙っている方向性ということです。

 そしてもしこのような構造の構築に成功すれば、これは巨大な社会の情報流通基盤になっていく可能性がある。そこでいまのフェースブックは、ジグソーパズルのピースを埋めるように、さまざまなサービスを充実させているところなのです。たとえばロケーション通知、Q&A、ツイッター的ステータスアップデート、つい昨日はスカイプのビデオチャットも導入の方向で検討されていることが報道されていました。さらに物販の分野にも進出しています。

■今週のブックマークは、以下のChromeOSの話題など2本。

 グーグルのアンドロイドとクロームという2つのOSはどういう棲み分けなんだろう?と疑問に思っている人も少なくないでしょう。この記事にはその回答が明快に解説されています。要するにグーグルが目指しているのは、HTML5が完璧に普及した世界。その世界ではすべてのコンテンツやアプリケーションはウェブブラウザ上で稼働します。つまりはブラウザとOSが一体化するということで、クロームはそのようなOSを目指している。だからブラウザとOSが同じ名前になっているというわけですね。そしてそこにいたるまでの過渡期として、アンドロイドがある。アンドロイド上でアプリを動かすというモデルはグーグルにとっては中間戦略でしかないということでしょう。
■Chrome OSはタブレットやテレビにも 
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■いかがでしょうか。今回は全文でなんと約9200文字。
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