11月29日午後5時配信の有料メルマガ 「ネット未来地図レポート」は119号。いま日本でも急速に盛り上がってきているフェースブックが今後日本でどのぐらい普及する可能性があるのか?を論考します。前編ではまず「パブリック/プライベート」「ロケーション/リアルタイム/レコメンド/Q&Aなどのジャンル横断」という2つの座標軸から、フェースブックの戦略の全体像を解説。
■本文より抜粋で紹介
フェースブックは、当初の排他的プライベートメディアから脱して、2000年代後半からは徐々に「情報流通」を中心としたパブリックメディアを志向するようになっていきます。
このあたりの問題意識については、ロングテールの法則や『FREE』で有名なワイヤード編集長のクリス・アンダーセンが2005年にブログで的確に指摘しています。これは私が2年前に刊行した『インフォコモンズ』でも紹介したコメントですが、再掲しましょう。
「レコメンデーション・ネットワークとしてソーシャル・ソフトウェアの問題はソーシャル・ソフトウェア自身に根ざしている。"友達"は特に趣向に関してはとっても無愛想な装置だ。悲しい事に、僕の友達のほとんどは音楽に関しては不快な趣向を持っている(だからと言ってそれを彼らに向けるわけではない)。一方、僕が頼っている音楽のレコメンデーションのほとんどは一度も会ったことのない人達だ、Rhapsody編集者かMP3ブログか。僕がアドバイスを必要としている実質的に他の狭いカテゴリー全てでは本当にものをわかっている専門家は僕の知らない人たちばかりだということだ」
つまりプライベートな友情の圏域では、自分にとって必要な情報は流れてこない。プライベートではなく、その外側にも広がる多くの人たちが存在するパブリックな圏域をうまくコントロールすることによって、そこからセレンディピティあふれた良い情報がうまく流れ込んでくるようになるということなのです。
言い方を換えれば、こういうことです。――人間は素晴らしいが、好みはまったく合わないヤツとつきあうか。それとも好みは合うが、性格の合わない嫌なヤツとつきあうか。前者はあたたかい人間関係を作り上げることはできるかもしれませんが、しかし情報共有圏は高度化されず、自分自身の情報アクセス能力を高めることはできません。そこでリスペクトを介して知らない人同士が共鳴するようなパブリック空間を作り、そこで有意義に情報を流せるようにならないだろうか? それがいまのフェースブックの狙っている方向性ということです。
そしてもしこのような構造の構築に成功すれば、これは巨大な社会の情報流通基盤になっていく可能性がある。そこでいまのフェースブックは、ジグソーパズルのピースを埋めるように、さまざまなサービスを充実させているところなのです。たとえばロケーション通知、Q&A、ツイッター的ステータスアップデート、つい昨日はスカイプのビデオチャットも導入の方向で検討されていることが報道されていました。さらに物販の分野にも進出しています。
■今週のブックマークは、以下のChromeOSの話題など2本。
グーグルのアンドロイドとクロームという2つのOSはどういう棲み分けなんだろう?と疑問に思っている人も少なくないでしょう。この記事にはその回答が明快に解説されています。要するにグーグルが目指しているのは、HTML5が完璧に普及した世界。その世界ではすべてのコンテンツやアプリケーションはウェブブラウザ上で稼働します。つまりはブラウザとOSが一体化するということで、クロームはそのようなOSを目指している。だからブラウザとOSが同じ名前になっているというわけですね。そしてそこにいたるまでの過渡期として、アンドロイドがある。アンドロイド上でアプリを動かすというモデルはグーグルにとっては中間戦略でしかないということでしょう。
■Chrome OSはタブレットやテレビにも
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■いかがでしょうか。今回は全文でなんと約9200文字。
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