12月28日配信の有料メールマガジン「ネット未来地図レポート」は、「電子書籍のコンテンツとコンテキストが交わる世界(前編)」と題して、電子書籍についての新たな論考を展開しています。
書籍のコンテンツとコンテキストは今後、オープン化されていくのか。もしそうなっていくとしたら、いったいその先にはどんな構造が立ち現れてくるのか。書籍「電子書籍の衝撃」を上梓したのは今年4月でしたが、その後に私自身で深めていった論考を今週号と年明け10日配信の次号で展開いたします。
以下は本文の抜粋から
まず書籍を、コンテンツとコンテキストの総体であると捉えてみましょう。書籍のコンテキストは、オープンに誰にでも開かれています。仮に著者や出版社が「この本はBの視点で読んでほしい」というコンテキストを定義していたとしても、読者の側が「この本はBの視点で読むと面白い!」ととらえ、そのB視点というコンテキストがブログやTwitterなどで流通して支持されれば、多くの人はB視点でその本を読むようになる。著者や出版社の側が「B視点で読まれては困る。A視点で読んでほしい」と願っても、制限したり禁止することはいっさいできません。コンテキストは著者や出版社の所有物ではないからです。つまり完全オープンであるということです。
一方、コンテンツは著作権法で厳密に守られていて、オープンではありません。コンテンツの内部(本文の章やパラグラフ、文章、見出し、写真、図版)に外部から直接アクセスすることはできないのです。これをウェブによる構造化という概念で考えると、次のようになる。
(1)書籍のコンテキストは、ウェブ化されている。
(2)書籍のコンテンツは、ウェブ化されていない。
O'Reilly Rader(オライリー・レイダー)というサイトで、ヒュー・マクガイヤー(Hugh McGuire)という人が「本とインターネットの境界はなくなっていくだろう」という記事を書いています。
彼は書籍を、「インターネットの内側にあるのか、それとも外側にあるのか」というポイントで考察しています。インターネットでは、コンテンツはウェブの流儀で構造化されています。ウェブの本質はリンクで、リンクに基づいて検索され、あるいは更新通知され、それが読み手の側に情報となって流れていきます。
しかし現在の電子書籍は、デジタル配信されているという意味では印刷物流だった紙の本よりもずっとインターネットに近い場所にまでやってきていますが、このようなウェブの流儀には則っていません。マクガイヤーは書いています。
「電子書籍の特定のページやパラグラフ、章、画像、表などに対してディープリンクできない。
電子書籍に対する標準的なリンクのシステムが存在しないので、電子書籍のタイトルそのものやその中の章に対するパーマリンクが存在しない。
そしてみんなが望んでいる書籍本文のコピーアンドペイストもたいていの場合できない。
たとえば『モントリオールについて1942年に書かれた本』というような横断的な検索ができない。同じ出版社の中でさえも」
だからまだ電子書籍は「インターネットの外側」にいるということです。これをインターネットの内側に持ってくるためには、リンクとテキストを構造化してリーチ可能にしなければならなりません。
今週のブックマークは4本!
Twitterのアカウントの信頼度や人気度を測る数値としてはフォロワー数が現時点では一般的ですが、指標としてはあまりにも大ざっぱすぎると言えるでしょう。しばらく前、朝日新聞に香山リカ氏と斎藤環氏がツイッターを批判するという記事が掲載されましたが、その中で香山氏が「ツイッターはフォロワー数がすべてで、これは市場原理主義の弊害だ」という香ばしいコメントを寄せていました。これはまあ論外としても、フォロワー数だけで価値がわかるわけではないというのは当然のことです。実際、「情報商材系」の人たちはフォロー/リムーブを頻繁に繰り返してはフォロワー数だけを機械的にどんどん増やしていくというようなことをやっていて、しかしそこには何の価値も生まれていません。
90年代半ばの検索エンジンはサイトの評価基準が甘かったため、情報商材系のようなスパムにさんざん悪用され、どんなキーワードで検索しても「ポルノ」「カジノ」が表示されてしまう、というようなことが起きていました。そこに登場したのがグーグルで、「人気の高いサイトからリンクされているのは良いサイト」というページランクテクノロジを持ち込み、検索エンジンの性能を飛躍的に高めたのです。
それと同じように、ついったーでも「人気の高い人からたくさんリツイートされている人は良いユーザー」というような信頼度指標を実現することは可能でしょう。おそらく近いうちにそのような解析技術が登場してくるのではないかと思います。
■フォロワー数より誰にリツイートしてもらうかが重要
http://www.ikedahayato.com/?p=2530