1月23日配信の有料メルマガは「アップルが発表したiBooks Authorの衝撃〜アップルは電子書籍のブルーオーシャン化を狙っている」。アップルがアマゾンとどう対抗し、電子書籍ビジネスをひっくり返そうとしているのかという戦略を分析しています。
以下は本文の抜粋から
ではアップルはどうすべきなのか。iPadという魅力的なタブレットを生み出しながら、少なくとも電子書籍の市場においてはiPadはその他大勢のタブレットと同じようなコモディティ化したデバイスへと落とし込まれようとしています。これに対抗するためには、(3)のハードウェアレイヤーではなく、(1)のコンテンツや(2)の配信システムのレイヤーへと出て行かなければなりません。
しかし配信システムのレイヤーにおいてはKindleの寡占が進んでおり、これを突き崩すのは容易でありません。そこでアップルが考えたのが、(1)のコンテンツ部分から巻き返しを図るという壮大な戦略だったのではないかと私は推測しています。
アマゾンがKDPで成功しているように、今後の電子書籍の流れは「出版社抜き」のセルフパブリッシングへと進んでいくことは大筋では間違いありません。しかし現状のKDPは、あくまでもテキスト中心のセルフパブリッシングプラットフォームです。動画や画像、音声、インタラクティブ性を含んだウェブ的な書籍を制作するのには適していません。電子書籍は今後どのような方向へと進化していくのかはまだ定かではありませんが、ひとつの可能性としてこのような「ウェブ化」は十分にあり得る未来だと考えられています。そしてこのウェブ化が特に可能性を持っているのが、教科書や辞書辞典などの分野でしょう。
この「ウェブ化される電子書籍」のセルフパブリッシングを完璧に実現しているのが、今回発表されたアップルのiBooks Authorです。そしてこのiBooks Authorで作成された電子書籍はiBookStoreでしか販売できず、またiPadでしか表示できません。つまりは「ウェブ化される電子書籍」というまったく新しい市場において、iBooks Authorは上記のレイヤーモデルの(1)コンテンツ(2)配信システム(3)ハードウェアを完全に垂直統合してしまっているのです。
この垂直統合が成り立つかどうか。
(3)のハードウェアレイヤーで、iPadは強力な支配力を持っています。特にウェブ化電子書籍が載る液晶のカラータブレットでは他社の比ではありません。モノクロの電子ペーパーリーダーでは市場シェアを獲得しているKindleも、液晶カラータブレットではFireを昨年末に投入したばかりで、iPadにはまったく追いつけていません。このiPadの独占支配力でレバレッジをかけて、ウェブ化電子書籍というブルーオーシャンを一気に取ってしまおうというのが、今回のアップルの戦略なのではないかと私は分析しています。
(以下はメルマガ本文で!)
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私は先週の朝日新聞読書面「売れてる本」コーナーで、橋下市長と堺谷太一さんの共著本「体制維新」を書評し、以下のように書きました。「(橋下市長の考える政策に)妥当性があるか反対勢力や有識者は全力で議論すべきだ。しかし一部メディアや有識者は『ファシズム』とののしるばかり」「どこかで誰かが一新しなければならない。誰に任せるのか、その新体制はどうあるべきなのかを論じるべき時期に来ている」」
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